Watermark

Jimmy Webb
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How delicate the tracery of her fine lines
Like the moonlight lacetops of the evening pines
Like a song half heard through a closed door
Like an old book when you cannot read
the writing anymore

  何と繊細なんだろう、彼女の美しい輪郭を縁取るトレーサリーは・・
  松の枝を通した、月光のレース模様のように
  閉じられたドアの向こうから漏れ聞こえる歌のように
  もはや文字を見分けられない程の古書のように

How innocent her visage
as my child lover lies
Pressed against the rainswept
windy windows of my eyes
Like an antique etching glass design
That somehow turned out wrong

  なんと純真な顔立ち・・・
  横たわる、僕の愛しい彼女
  涙にくれる、僕の目に映し出されているよ
  それは、アンティークなエッチング・ガラスデザインのようさ
  なぜなんだ、その美しさが僕の中で壊れていく・・

I keep looking through old varnish
At my late lover’s body
Caught on ancient canvas
And decaying…disappearing
Even as I sing this song

  僕の目は見つめ続ける
  永遠のキャンバスに刻みこまれた、亡くなった彼女の身体を
  絵画の表面を覆うひび割れたニスの上から

  朽ち果てていく...
  失われていく...
  僕がこうして歌っている間にも・・・

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How secretly and silently my sorrow disappears
You can’t see it with your eyes
or hear it with your ears
It’s like a Watermark
that’s never there and never really gone

  ひっそりと、静かに僕の悲しみが薄れていくよ
  目にうつる事なく・・・
  耳に聴こえる事もなく・・・
  それは、まるですかし模様みたいだ
  触れることも出来ない
  消えてしまうこともない

I keep looking through old varnish
At my late lover’s body
Caught on ancient canvas
And decaying…disappearing
Even as I sing this song
Even as I sing this song
Even as I sing this song

  僕の目は追い続ける
  永遠のキャンバスに刻みこまれた、亡くなった彼女の身体を
  絵画の表面を覆うひび割れたニスの上から

  朽ち果てていく...
  失われていく...
  僕がこうして歌っている間にも・・・

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 この曲も物悲しいストーリーですね・・・
Artの恋人が自殺してしまったと、何かで読んだ記憶があります。たしか、
このアルバムの発表より後だったと思います。

「トレーサリー」、「エッチング・ガラス」などの建築用語や美術用語がちりばめ
られており、それらの意味を理解しないとこの曲のイメージは伝わりません。

「トレーサリー」
教会などで、アーチ形の窓の上部にはめこむ装飾用の組子で、幾何学模様を
なしている。そこにステンドグラスが埋め込まれています。ありし日の彼女の姿は、
教会のステンドグラスに描かれた聖母マリアにも思えるんでしょう。

エッチング・ガラス
この言葉が、一番Watermark、つまり「すかし模様」に近いイメージかと思います。
特殊な処理を施して、ガラスに模様を描いたものです。

ニス(old varnish)→油絵を保護するために、ニスを表面に塗る事があります。その
光沢が絵画をより美しくします。それは時を経ると、絵の具とともにヒビ割れて行くの
でしょう。

亡くなった愛する女性が、自分の記憶の中で、絵画のように美しい思い出として
刻まれている。でも、時の流れとともに思い出が少しずつ風化して、悲しみすら遠のいて
いく。悲しみが薄れていくというのは、失恋なら傷が癒えるのだから、新たなスタートに
繋がりますよね。でも、死によって美化された思い出からは離れられない、離れたくない
のでしょう。

生きていてくれれば、抱きしめることも出来るし、ぶつかり合うことも出来る。
今は手に触れることも、忘れることも出来ずにいる、そんなつかみどころのない哀しみを
すかし模様(Watermark)のようだと歌っているようです。

ジミー・ウエブの詩の世界も、Paulとは色合いこそ違えど、奥深く叙情的ですね。Artが
歌いたくなる気持ちが少し分かる気がします。訳してみて、この曲から伝わる悲しみが
少し理解できました。

(2010/02/07)

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